初期のヒアリングでは限定的なご要望でしたが、こちらから積極的に提案することで言語化されていない潜在的な要望を引き出しました。ヒアリングを進める中で、サウナが好きな役員様が多いことに気づき、これを踏まえて大浴場にサウナを組み込む提案を行いました。このアイデアは、クライアントから高く評価されました。

購入前にプランを固めて提案する必要があったため、現地確認の回数は限られていました。客室の増設や大浴場の新設など構造に関わる改装になるため、ポイントを的確に押さえながら、設備の刷新も含めて実現可能かどうか綿密に検証しました。

既存のベーシックな印象を刷新できるように、クライアント好みのデザインで変わった感を出す必要があると感じました。まずは現状の懸念点を把握しながら、既存流用の箇所と、デザインに注力する箇所の整理を徹底することで、新たな価値の創出ににこだわりました。

役員8人が各自1部屋を利用できることが条件だったため、客室数を確保し大浴場を新設する他、環境に配慮し燃料を重油からガスに変更し暖炉を新設するなど、意匠だけでなく構造・設備・セキュリティにも配慮して設計しました。施設には広い厨房がありましたが、客室を設けるために厨房を縮小する方向で提案。食事はケータリングサービスを想定されていましたが、可能な限りの調理機能を保持し、従業員控室の確保など機能やバックヤードにも配慮して計画を進めました。

設計担当者が計画段階で要件整理をかなり詳細まで詰めてくれていたので、私はコンセプトメイクから空間デザイン、ゾーニング、ディティールまで居心地の良さを追求し、「 KARUIZAWA EXPERIENCE 」を施設全体に落とし込むことに集中できました。タイトなスケジュールの中、期待を上回るデザインを具現化することに不安がありましたが、プロジェクトメンバーと共に現場や工場にも何度も足を運び、最後までコミュニケーションをとり続けたことが良い結果につながりました。

提案を高評価してくださった一方で、予定着工日までの期間がタイトであった。具体的なプランニング・デザイン進行と見積積算を同時進行しました。イレギュラーの多い進行でしたが、全員が一丸となって熱量高くプロジェクトにコミットしていたからこそ、契約・着工を迎えられたと思います。

軽井沢は夏場に工事の規制がかかります。クライアントからは夏季休暇の期間に施設を一時利用したいということだったので、4月から7月の3ヵ月を1期工期工事としてエントランスホール・客室6部屋・厨房を先行して完了させ、宿泊可能な環境を整備しました。9月から11月末を2期工事として、大浴場・客室2部屋・外構工事を完了させました。期限内に確実に工事を完了させるために、スケジュールをきめ細かく計画することに力点を置きました。

施設を利用された役員の皆様から高く評価していただき、「予算をかけて改修した甲斐があった」と肯定的な感想を頂戴しました。初めて宿泊されたときに、その場で次回の宿泊を決められるなど、居心地の良さを享受していただけたと思っています。